副社長メッセージ

守りと攻めの双方向から当社グループの企業価値を高めるガバナンスを実現します。

多岐にわたる製品群・技術力を守るコーポレートガバナンスの役割

副社長に就任して1年が経ちました。この1年間は、グループ会社を含め、およそ30拠点をめぐり、製造現場の見学や第一線で働く皆さんの声を聞く機会を得て、当社グループの全体像と今後取り組むべき課題の理解に努めました。私がまず感じたのは、各社とも技術や品質に非常に真面目な会社であることです。そして、建材や工業製品など非常に多品目多品種にわたる製品を製造・販売し、さらにはエンジニアリング分野でも多様な独自技術を持つイノベーティブな企業集団であることです。工場で複雑な工程を経てスピーディーに製品が出来上がる光景には圧倒されました。一方、年間800万枚生産される建材ボードの検査は機械では限界があり、最終的には人の目でチェックする目視検査が欠かせないことには驚きました。

当社グループの高付加価値な製品群・技術力は、現場を支える従業員をはじめ、マンパワーによって支えられています。しかし、ご承知のとおり、昨今は品質・安全・環境・人権に何らかの瑕疵が生じた場合、その企業の信用を揺るがすような事態に発展することも稀ではありません。それほどの大きな問題でなくても、現場の皆さんと話をしてみると、それぞれに仕事上の悩みや困りごとを抱えていることも見えてきました。さらには、あまりに恒常化して困りごととすら認識されていないような課題も潜在的にあるのではないかと感じました。そうした小さな綻びを放置せず、一つひとつ解決に導いていく仕組みづくりをすることが私の役割だと考えています。

働く人がレベルアップしていく仕組みをグループに広げる

当社グループ製品の信頼や高い品質の維持を担う部署として、品質保証部があります。製造部門の中に品質保証の機能も置かれることが少なくありませんが、当社グループの場合、製造部門と独立して品質保証部があります。部員は品質保証のプロフェッショナルであり、生産拠点を毎年監査に入り、前年の指摘の改善、クレーム対応などを隈なく確認します。内部統制部は、毎年20カ所程度の拠点のきめ細やかな業務監査を実施し、業務が適切に行われているかをチェックするだけでなく、従業員へのヒアリングを通じて、業務の効率化や品質の一貫性を図っています。

リスクマネジメントを強化するには、人間の行動原理や心理に踏み込んだ施策があって然るべきだと私は考えています。これまでの日本の製造業は、「明確なルールを作り統制をすれば、人は正しく行動するであろう」と“性善説”に寄ったマネジメントを行ってきました。それも正しくはありますが、さらに進んで「人は時にミスすることもあれば、仕事に慣れて、手を抜いてしまうこともある。」という現実的な視点から現場の課題を拾っていくことも必要だという考え方を最近知りました。課題を見つけたら、ミスを発生させない具体的な仕掛けや方法を考えて「仕組み化」する。それに従うことで個人のパフォーマンスやスキルが自ずと上がり、効果を生み出せるのが理想です。様々な現場で私が感じたのは、従業員の経験やスキルの差です。人手不足が深刻化する昨今、マンパワーの確保に課題を抱えているのは当社グループも例外ではありません。また、熟練した従業員の持つ、言語化されていないスキルや経験値はあらゆる場面で欠かせません。

安全管理の面では、安全作業標準書を動画マニュアル化すべく、作業を担当する従業員を巻き込みながら、基本的な動作や確認方法、危険動作を言語化し、さらには動画や画像で見える化し、まとめていく作業をスタートしました。

また、事務系の業務マニュアル整備プロジェクトも内部統制部が事務局となって始めました。これは、業務の属人化を防止し、効率化および品質の均一化を図るものです。また、新入社員の教育にも役立ちますし、業務の引き継ぎもスムーズにいくはずです。

当社グループでは、従前より設置していた内部通報窓口の名称を利用しやすいイメージとなるよう2023年度から「ヘルプライン」と改め、不正の通報、職場や業務上の悩みの相談を受け付けています。ケース・バイ・ケースできめ細かく対応し、通報者の意思やプライバシーを最大限尊重し、社内で立場が悪くならないよう厳重に配慮しています。ここ最近、通報・相談件数が徐々に増えており、これは良い傾向だと捉えています。

企業は、結局のところ「人」です。企業側は従業員が正しい行動をとりたくなるような「仕組み」を提供し、それによって個人のレベルアップを引き出す――それがガバナンスやリスクマネジメントを高める近道ではないかと私は考えています。

リスクとチャンスを正しく見極めスピード感ある経営判断を下す

長期経営構想「Vision2033」では、従来の建設・建材事業、工業製品・エンジニアリング事業という枠組みから発展して、産業インフラや環境領域でも新たなビジネスモデルの確立を目指しています。

そのための戦略としてM&Aは欠かせませんが、成功に導くには、社内でもロングリストからショートリストに絞り込み、対象企業の調査や交渉プロセスを検討していく綿密な準備が欠かせません。

今後、当社グループが海外展開を進める際には、やはり時間をかけた中長期戦略が必要です。海外事業では、様々な障壁や課題が生じます。その経験の積み重ねと海外人材が揃ってはじめて、軌道に乗るのが海外事業です。しかも、技術移転が進むほど現地企業が参入し、市場を取られるリスクも伴います。当社グループの高付加価値な建材は、発展著しいアジア地域で十分需要が見込めるからこそ、慎重に戦略を練り、中長期的な展望で進めていく姿勢が必要だと考えています。

リスクマネジメントに関しては、施設の老朽化や安全管理の問題など予め備えられるリスクもあれば、ウクライナ危機や中東危機のような備えられないリスクもあります。前者は、より厳しい視点で精査していきたいと思います。後者は、幅広く国際情勢に視野を広げて様々なリスクを想定しながらも、ノータイムで対応できる経営側の機動力や決断力が必須だと考えています。

「熱をコントロールする技術」で当社グループはもっと世の中に貢献できる

当社グループの強みは「熱をコントロールする技術」を起点に、様々な製品・工法を幅広く展開し、製造から販売、施工までのワンストップ体制を実現していることです。「熱をコントロールする技術」は今後、エネルギーの有効利用や環境対応が求められる時代においてますます必要とされていくものと思います。

そのために、様々なニーズにきめ細かく応える多品種多品目の製品・サービスはますます価値をもってくるはずです。現在、新たな技術開発もいろいろと進められていますが、同時に既存の製品の価値や技術を改めて見直し、ステークホルダーの皆様にしっかりとアピールしていく取り組みも重要だと考えています。真面目な会社であり、数々の知的資産を持つ当社グループの価値を守り、健全な企業活動の継続・発展に力を尽くしていきたいと考えています。